グルメ

本場の牛たん名店めぐり
— 一枚の厚切りに宿る、昭和23年からの物語

麦飯とテールスープが付いた牛たん定食
写真:ノボホショコロトソ(CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

炭火の上でぷっくりと反り返る厚切りのたん。じゅっという音と煙の香りだけで、ごはん一杯いける気がします。今や全国区の「牛たん焼き」ですが、そのふるさとが仙台の小さな店だったことは、意外と知られていません。まずはその物語から。

はじまりは昭和23年、ひとりの料理人の執念

仙台牛たん焼きの生みの親は、「太助」の初代・佐野啓四郎さん。昭和23年(1948年)、仙台の中心部に牛たん焼きの専門店を開いたのが始まりとされています。山形出身の佐野さんは、東京で料理修業をしていた頃にフランス人シェフからタンシチューの美味しさを教わり、「これを日本人の口に合う焼き物にできないか」と試行錯誤を重ねたのだそうです。

塩を振って熟成させ、炭火で一気に焼き上げる。今に続く牛たん焼きの基本形は、このときほぼ完成していました。その後、佐野さんのもとで修業した職人たちが次々と独立し、昭和40〜50年代にかけて仙台の街に専門店が増えていきます。「仙台名物・牛たん」というフレーズが定着したのもこの頃。つまり牛たんは、一人の職人の工夫が街の食文化にまで育った、わりと新しい名物なんです。

「定食」こそ完成形。麦飯とテールスープは外せない

仙台の牛たん定食には、お約束の型があります。麦飯、テールスープ、白菜の浅漬け、そして薬味の南蛮味噌漬け。とろろが付く店も多いですね。厚切りのたんをひと口、麦飯をかき込んで、コクのあるテールスープをすする——この循環が完璧に設計されていて、初めて食べた人はたいてい「定食でこの満足感か」と驚きます。青唐辛子の南蛮味噌は途中の味変に効くので、ぜひ試してください。

仙台駅近くの専門店の牛タン定食
写真:くろふね(CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

どの店に行く?タイプ別の選び方

まず歴史を味わうなら、発祥の系譜を継ぐ「味太助」本店へ。カウンター越しに職人さんが焼く姿を眺めながら食べる一枚は格別です。全国に店舗を広げた「利久」は、仙台市内に多数の店舗があり、メニューの幅広さと入りやすさが魅力。牛たん激戦区らしく、ほかにも「閣」「喜助」「司」「たんや善治郎」など、それぞれに焼き加減や厚さ、熟成の哲学が違う名店が揃っています。

個人的なアドバイスをひとつ。人気店のピークタイムはどこも行列必至なので、少し時間をずらすか、仙台駅3階の「牛たん通り」を活用するのが賢い選択です。新幹線の乗車前に一食、というのも仙台ならではの贅沢ですよ。

味太助 公式サイト 牛たん炭焼 利久 公式サイト